デジタルアーカイブ学会・ワークショップ(2021年4月25日)報告

デジタルアーカイブ学会・ワークショップ(2021年4月25日)報告

「都市における文化資源のアーカイビング」

■日時 2021年4月25日(日)10時〜12時

■場所 オンライン

■企画趣旨
都市では、住民、企業、NPO、宗教団体、行政機関などの多様なステークホルダーが互いに関係性を持って日々活動し、衣食住等の生活様式、生活・活動の場を提供するインフラや建築物、催し事や祝祭などを生み出してきた。これらは次の展開のための文化資源となるが、状況によっては再構成が困難なまでに消去されることも稀ではない。特に、都市は都市ゆえに常に開発の強い圧力にさらされ続けており、とりわけ、市街地が変化しやすい制度的環境にある我が国においては、文化資源がその価値が顧みられる余裕もないままに失われる危険に晒されている。それゆえ、都市の文化資源のアーカイブ活動(アーカイビング)においては、文化資源の生成流転を冷静に見極めつつ適切な方法の検討を続けていく必要がある。
本ワークショップでは、東京都心部でデジタル技術を使った文化資源のアーカイビングを行う複数の団体による事例報告を行い、デジタル化の可能性と限界、アーカイビングの粒度、アーカイブシステムの持続可能性の3つの視点から、互いに参照し合えるようなオープンなモデルの提示を目指して議論する。

■構成&登壇者
企画説明「都市における文化資源のアーカイビング:地図、記憶、映像 における取り組みから考える」
中村雄祐(東京文化資源会議幹事/東京大学)

報告1 「東京文化資源会議・地図ファブプロジェクトチームの活動:地図のアーカイブ方法の検討とその活用実践」
真鍋陸太郎(東京文化資源会議・地図ファブPT / 東京大学)
鈴木親彦(東京文化資源会議・地図ファブPT / ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター)

報告2 「文京区本郷における銭湯・旅館・喫茶店等での具体的な取り組みについて」
栗生はるか(東京文化資源会議・本郷のキオクの未来PT / 文京建築会ユース代表)
三文字昌也(東京文化資源会議・本郷のキオクの未来PT / 東京大学大学院)

報告3「空間3Dスキャンとその利活用について」
松尾遼(東京ケーブルネットワーク)

討論「デジタル化の可能性と限界、アーカイビングの粒度、アーカイブシステムの持続可能性」

■報告
セッションはすべてオンラインで行われた。報告では、それぞれの活動におけるウェブアプリ、ドローン映像、3Dスキャン、VR等の活用、また、地域住民の交流イベントや廃棄された道具類の保存と活用など、文化資源のデジタル/アナログ両方のアーカイビングの取り組みが紹介された。
討論では、チャットへのコメントや質問を踏まえ、まず、東京都心部と他の地域との違いについて意見交換が行われた。人口減少地域での活動の難しさが指摘されたが、どの地域においてもボランティアのマンパワー不足が共通する課題であることも確認された。また、肖像権や著作権への対処方法について、時実象一企画セッション担当理事より本学会法制度部会の会員向け無料法律相談が紹介され、事例から発信してほしいとの助言があった。このほか、アーカイビング促進のためにもメタデータの規格のさらなる標準化が求められること、今後はVRやARがさらに普及すると予想され、関連する技術やビジネスモデルの変化にも注目することの必要性などが議論された。

なお、本セッションの関連情報は次のとおり。

関連リンク集(報告順)

以上。